プロジェクト・サイラス・スミス そのうち翻訳したい作品

現在のペースでは一生かかっても無理な気がしないわけでもありませんが、備忘録も兼ねてリストアップしておきます。

なお年代分けは適当です。

クラシック/科学的ロマンス

『睡眠者めざめる時(仮)』H・G・ウェルズ著

When the Sleeper Wakes (1899) by H. G. WellsPG#775

ウェルズの主要SFの中で唯一、なぜか完訳がないので。児童向け抄訳の『冬眠200年』を読んだ限りでは完訳の価値あり。


『ハンプデンシャーの驚異(仮)』J・D・ベレスフォード著

The Hampdenshire Wonder (1911) by J. D. BeresfordPG#53028

のちのミュータントものに影響を与えた作品らしい。『オッド・ジョン』の解説に(福島正実版、荒俣宏版のいずれにも)言及あり。


『流星の追跡(仮)』ジュール・ヴェルヌ著

La Chasse au météore (1901) by Jules VerneLa Chasse au Météore - Wikisource

完訳されていないので。児童向け抄訳の『黄金の流星』を読んだ限りでは完訳の価値あり。

フランス語を直接読むのはキツいので、現実的には英訳版からの重訳を検討。


『サルディスの巨石(仮)』フランク・R・ストックトン著

The Great Stone of Sardis (1898) by Frank R. StocktonPG#6127

かの『女か虎か』のストックトンによる、地球空洞ものの古典らしい。昔、SFマガジンのバックナンバーで紹介を読んで認知。


「フランク・リード・ジュニア」シリーズ(仮)ルイス・P・セナレンス著

Frank Reade, Jr. by Luis P. SenarensBooks by Senarens, Luis (sorted by popularity) Project Gutenberg

言わずと知れた、ダイム・ノベルにおける代表的なSF的作品。一作くらいは翻訳が欲しい。


『煉瓦製の月(仮)』エドワード・エヴェレット・ヘイル著

The Brick Moon (1869) by Edward Everett HalePG#1633

人工衛星を扱った最初の小説らしい。


『失われた大陸 アトランティスの物語(仮)』C・J・カットクリフ=ハイン著

The Lost Continent: The Story of Atlantis (1900) by C. J. Cutcliffe HynePG#285

アトランティスものの古典らしい。同作品とハインの存在はちくま文庫の『ヴィクトリア朝空想科学小説』で認知した。この人は同書に短編が一つ訳されているだけで、全くもって日本では未紹介の模様。


『英国の野蛮人(仮)』グラント・アレン著

The British Barbarians (1895) by Grant AllenPG#4340

未来からの時間旅行者から見た現代(19世紀)の英国の物語で、この種の作品の走りとして有名らしい。この人も『ヴィクトリア朝空想科学小説』で認知。近年『アフリカの百万長者』が論創海外ミステリから翻訳されただけ、かなり状況は良いが、やはりSFがもっと読みたい。


『火星のガリバー(仮)』エドウィン・レスター・アーノルド著

Gulliver of Mars (1905) by Edwin Lester ArnoldPG#604

バローズにも影響を与えたと言われる火星もの。


『黄金郷の食人樹(仮)』フランク・オーブレイ著

The Devil-Tree of El Dorado (1897) by Frank AubreyPG#43944

秘境もの。『SFなんでも講座』の「世界のSFの歴史」で紹介されていて、印象に残っていた作品。PGに2013年に上げられていたとは! 2019年6月に至るまで気が付かなかった。

同じ作者のA Trip to Mars (1909) なるこれまで知らなかった作品も上げられており、楽しみが増えた。 → PG#44534


『あべこべ物語 父親のための教科書(仮)』F・アンスティ

Vice Versa; or, A Lesson to Fathers (1882) by F. AnsteyPG#26853

C・S・ルイスの著作で度々言及されていて認知。父親と息子の肉体と意識が超自然力により入れ替わるコメディらしい。大正時代に一度邦訳されているようだが、それではさすがに古すぎる。


特定の作品に着目しているわけではないが、何か訳したい作家

ロバート・バー (Robert Barr)

これも『ヴィクトリア朝空想科学小説』で認知した作家。『放心家組合』等で著名なミステリ作家と同一人物であることは後で気づいた。ミステリの邦訳はそこそこあるがやはりSFも読みたい。短編のいくつかPGでSFとして分類されている。→Science_Fiction_(Bookshelf)#B

ジョージ・グリフィス (George Griffith)

ヴィクトリア時代の通俗科学的ロマンスの大物。近未来戦争SF『革命天使』、宇宙SF『宇宙のハネムーン』などが有名か。現状、黒岩涙香による明治時代の翻案を除けば、『ヴィクトリア朝空想科学小説』に短編が一つ訳されているのみ。

ギャレット・P・サーヴィス (Garrett P. Serviss)

科学啓蒙家であり科学的ロマンスも書いた。『エジソンの火星征服』、『第二の洪水』、『宇宙のコロンブス』など。邦訳は無いが野田昌宏により『エジソン…』は詳細に紹介されており、魅力を感じる。


パルプ時代

『大決戦2419年(仮)』フィリップ・F・ノーラン著

Armageddon—2419 A.D. (1928) by Philip Francis NowlanPG#32530

言わずと知れた「バック・ロジャーズ」ものの第一作。


『ラジオ・マン 金星に行った男(仮)』ラルフ・ミルン・ファーリィ著

The Radio Man (1924) by Ralph Milne Farley PG#52167

言わずと知れた、バローズ・タイプの有名作品の一つ。ファーリィについてはむしろ国土社の『液体インベーダー』の作者というイメージが強い人も多いだろう(私もそうです)。


《名探偵ハリー・ディクソン~アメリカのホームズ》シリーズ(仮)ジャン・レイ著

Harry Dickson Le Sherlock Holmes American (1920年代末~1930年代) by Jean Ray

ベルギーの幻想文学の大御所ジャン・レイによる科学/オカルト探偵もの。なぜか岩波少年文庫から6編3冊が出ており、いずれも通俗娯楽小説として文句なしに面白い――そして、それに留まらない今日的な価値を未だに保っており忘れ去られるべきではない。

本シリーズは全178編という驚くべき数があるらしく、邦訳されたのはまさに氷山の一角に過ぎない。全部とは言わないがもう少し読みたいものである。

それ以外だと怪奇小説の短編集が何冊か邦訳されているが、そういうのじゃないんだよなぁ……。と思っていたら、国書刊行会から、ずばり『マルペルチュイ: ジャン・レー/ジョン・フランダース怪奇幻想作品集』が刊行された。素晴らしい。けどもっと読みたい。


特定の作品に着目しているわけではないが、何か訳したい作家

スタントン・コブレンツ (Stanton A. Coblentz)

SFマガジン1973年秋のワンダー・デラックス号のクラシック特集で『火星からの使者』を読んで認知した。いい味の作家だが、『火星からの使者』しか邦訳なし。

イアンド・バインダー (Eando Binder)

代表作『ロボット市民』は幸いにして邦訳あり。この人(人たち)の素朴で暖かな作風は他に類を見ない。

レイモンド・Z・ガラン (Raymond Z. Gallun)

莫大な作品数の割に邦訳はかなり少ない。個人的には『宇宙の住人たち』が思い出深い。

マイルズ・J・ブルウアー (Miles J. Breuer)

意外にも『四次元方程式』しか邦訳なし。

✓ネルスン・ボンド (Nelson Bond)

ユーモアSFの大家。個人的には『宇宙人ビッグスの冒険』と『SF作家失格』が思い出深い。あまりにも翻訳に恵まれていない。

→『金星貨物便 宇宙船乗りランスロット・ビッグス第一話』、『ビッグス、海賊を料理する 宇宙船乗りランスロット・ビッグス第二話

スタンリイ・G・ワインボウム (Stanley G. Weinbaum)

むしろ全作品コレクションが出ていないのが不思議。

マンリー・ウェイド・ウェルマン (Manly Wade Wellman)

『ホームズの宇宙戦争』は絶品。SF作品はあまり翻訳に恵まれていない。

ジャック・ウィリアムスン (Jack Williamson)

短編、特に初期の短編はあまり翻訳に恵まれていない。

R・デウィット・ミラー (R. De Witt Miller)

『永遠に生きる男』の人。

O・A・クライン(Otis Adelbert Kline) → kline(PGA)

『火星の黄金仮面(火星の無法者)』の人。見え見えのバローズ亜流ながら、それなりに独特の味がある。もう少し訳されても良いのではないか。

リイ・ブラケット (Leigh Brackett)

白背の『リアノンの魔剣』、『地球生まれの銀河人』が思い出深い。格の割に翻訳に恵まれていない。特に『リアノンの魔剣』や『シャンダコール最期の日々』が属する共通の未来史(正式名称なし?)をもっと読みたい。

アーサー・K・バーンズ (Arthur K. Barnes)

『惑星間の狩人』の人。ゲリー・カーライルものには未訳作品が残るし、それ以外の作品にも興味を惹かれる。

レイ・カミングス (Ray Cummings)

格の割に翻訳に恵まれていない(特に短編)。良い作品は探せばいくらでもありそうだ。

フランク・ベルナップ・ロング (Frank Belknap Long)

SFはもちろん怪奇小説すら翻訳に恵まれていない。

マルコム・ジェイムスン (Malcolm Jameson)

当時の本国ではそこそこ知られた作家らしい。唯一の邦訳『西暦3000年』は総合的に見ると凡作だが、何か光る要素の痕跡を感じる。探せば良作はある気がする。

ロバート・ムーア・ウィリアムズ (Robert Moore Williams)

多作家のパルプ作家らしいが、日本ではほとんど知られていない。長編の邦訳はQ-Tブックスから出たどうでも良さそうな二作品のみ(読んでいるはずだが内容は全く記憶になし)。短編も邦訳は数作程度のようだ。『ロボット還る』が『時間と空間の冒険』に収録されているように、少なくとも短編には良作がありそうだ。


黄金時代

特定の作品に着目しているわけではないが、何か訳したい作家

✓トム・ゴドウィン (Tom Godwin)

『宇宙の漂流者』はバイブル。翻訳に恵まれていない。

『宇宙船に乗った野蛮人』『最後の勝利』

ジェイムズ・H・シュミッツ (James H. Schmitz)

骨太な娯楽SF作家。翻訳に恵まれていない。

H・ビーム・パイパー (H. Beam Piper)

夭折の娯楽SF作家。『リトル・ファジー』も『異世界の帝王』も思い出深い。翻訳に恵まれていない。

サム・マーウィン Jr. (Sam Merwin Jr.)

代表作『多元宇宙の家』が訳されているのが救いか。翻訳に恵まれていない。

ヘンリー・カットナー (Henry Kuttner) / ルイス・パジェット (Lewis Padgett)

何でもありの作家だが、「ホグベン一家」シリーズ等のユーモアSFが好きです。

クリストファー・アンヴィル (Christopher Anvil)

いい味の短編作家。翻訳に恵まれていない。

✓エリック・フランク・ラッセル (Eric Frank Russell)

短編が好きです。ユーモアものからしんみりする作品まで。

『マナ』

ゴードン・R・ディクスン (Gordon R. Dickson)

『宇宙の勝利者』はバイブル。あまり翻訳に恵まれていない。

レスター・デル・リー (Lester del Rey)

個人的には児童向けの『逃げたロボット』や『謎の大陸アトランティス』が思い出深い。格の割には翻訳に恵まれていない印象。

アラン・E・ナース (Alan E. Nourse)

個人的には児童ものの『タイタンの反乱』が思い出深い。格の割には翻訳に恵まれていない印象。

フィリップ・レーサム (Philip Latham) / R・S・リチャードソン (R. S. Richardson)

『消えた土星探検隊』の人。翻訳に恵まれていない。

ミルトン・レッサー (Milton Lesser) / スティーヴン・マーロウ (Stephen Marlowe)

『宇宙大オリンピック』を始めとした児童向け作家という紹介のされ方をして来たように思えるが、本領は必ずしもそうではなさそうだ。その作品を収録した50年代の「イフ」が、PGに多数アップロードされている。

✓チャールズ・L・フォントネイ (Charles L. Fontenay)

「SFマガジン」の第3号に『荒廃の惑星』が載るという滑り出しは良かったが、その後は翻訳に恵まれていない。寡作家というわけではなく、その作品を収録した50年代の「イフ」が、PGに多数アップロードされている。

『火星人とのコミュニケーション』

レイモンド・F・ジョーンズ (Raymond F. Jones)

多少の児童向けSFを除けば、翻訳に恵まれていない。


それ以降の時代

特定の作品に着目しているわけではないが、何か訳したい作家

ロバート・シルヴァーバーグ (Robert Silverberg)

ビッグ・ネームであり当然翻訳量は多いが、初期作品はあまり紹介されていない。

キース・ローマー (Keith Laumer)

『前世再生装置』、『タイムマシン大騒動』、『優しい侵略者』は傑作。この人の軽妙な通俗娯楽SFはいくら読んでも読み足りない。

なお兄弟のマーチ・ローマーも作家で、「オズ」シリーズを再解釈した作品を書いているらしい。読みたい……

ランドール・ギャレット (Randall Garrett)

『銀河の間隙より』は絶品。翻訳に恵まれていない。

E・C・タブ (E. C. Tubb)

職人的な多作家だが、「デュマレスト・サーガ」と「キャプテン・ケネディ」以外の翻訳量は極めて貧弱。日本のSF読者が知らない良作はいくらでもありそうに思える。読みたい。

また両シリーズとも翻訳が中断しているのが残念の極みだ。「キャプテン・ケネディ」はともかく、「デュマレスト・サーガ」は画竜点睛を欠いた状態なので何とかならないものだろうか。

アンドレ・ノートン (Andre Norton)

力強い娯楽SF『銀河の果ての惑星』や「太陽の女王号シリーズ」が思い出深い。

ジャック・ヴァンス (Jack Vance)

至高の職人。翻訳に恵まれているとは言えない。近年なぜか『ノパルガース』が出たし、国書刊行会から「ジャック・ヴァンス・トレジャリー」が出つつあるが、全然喰い足りない。

マイク・レズニック (Mike Resnick)

多作家だが翻訳率は低い。アフリカもののシリアス作品は名作揃いだし、個人的には『サンティアゴ』や『暗殺者の惑星』などの、レズニック未来史の娯楽作品が思い出深い。

ジョン・ジェイクス (John Jakes)

「第二銀河系シリーズ」と「戦士ブラクシリーズ」の人。あの独特のヴィヴィッドな味わいは他に類を見ない。もっと読みたい……。

特に「第二銀河系シリーズ」は予告されていた第三巻『妖術使いの惑星(仮)』が未だに刊行されていないので早川書房は責任を取ってほしい。


おまけ:他力本願で翻訳して欲しいSF

ロシア・東欧のSF

広大なる未知の大陸。特にロシア以外の東欧については訳書どころか情報も少なく、『東欧SF傑作集』『遥かな世界 果てしなき海』『世界のSF(短編集)ソ連東欧篇』『異邦からの眺め』あたりからわずかに窺い知れるのみ。

自分の語学能力でどうにかできる見込みはゼロなので、有志の奇跡的な偉業か、ロシア・東欧ブームの奇跡的な到来か、機械翻訳の更なる発展を待ちたい。

アレクサンドル・ベリャーエフ

あかね書房版『両棲人間』の巻末解説で紹介されていた、空を飛べる男の物語『アリエル』が未訳なので何とかして欲しい。また、その不遇な経歴からして未知の作品も多そうだ。誰か発掘して欲しい。

イェジィ・ジュワフスキ (Żuławski)

戦前ポーランドの雄。《月三部作》という名作があるらしい。レムを何十冊も訳すリソースがあったらジュワフスキを三冊訳してくれませんかね。

カリンティ・フリジェシュ (Karinthy Frigyes)

「六次の隔たり」の提唱者としても知られる戦前ハンガリーの雄。『東欧SF傑作集』収録の『時代の子』は優れたセンスを窺わせる。他にも『ガリヴァ旅行記』の続編ものの『ファレミドー』および『ツァピラーリア』をはじめ、多数のSF作品があるらしい。

ヤン・ヴァイス (Jan Weiss)

戦前チェコの雄。『迷宮一〇〇〇』以外にも複数の作品があるらしい。読みたい。