Communication by Charles Fontenay
地球からの最初の探検隊は、火星人と遭遇しなかった。第二次探検隊もそうだった。と言うのも、火星人がごく少数だからであり、最初の遭遇が第三次探検隊となったのは驚くには当たらない。
宇宙飛行が実現されるまでの長い年月に渡り、もし火星人が存在するならばいかにしてコミュニケーションを取るべきか、議論が重ねられ理論が組み立てられていた。しかし、いざその時になってみると、言うまでもなく誰も心の準備ができていなかった。
彼らの考え方は時代に即していなかった。
フォン・フリッシュ、ライリー、スミスは五・六人の火星人が近づいてくるのをじっと見つめていた。彼らの目は不安を隠せていなかった。もしGボート――惑星着陸艇――から二十マイルも離れているのでなければ、彼らはとっくに逃げ去っていただろう。あるいは、そう厳命されていなければ、彼らはまず発砲し、然る後に質問するという方針を取っていただろう。
「こちらはフォン・フリッシュです」と機関士がヘルメット内のマイクに、若干息を切らしながら話しかけた。「火星人がわれわれに近づいて来ます!」
「火星人はどんな様子だ?」とパワーズ船長がGボートから即座に返事をした。
「敵対的な様子はありません」
「なら静観しろ。危険は冒すな。やつらはどんな外見をしている?」
「人間より多少背が高いですが、胴体は丸くて、子供の胴体ほどしかありません。手足は著しく長いです。頭は大きく、目も耳も大きいです」
「やつらは知的なのか? 文明的なのか? どうやって呼吸している?」
「ちょっと待ってくださいよ、船長」とフォン・フリッシュが遮った。「そんなに続々と聞かれても答えられません。彼らは今、われわれの目前まで来たところです。身体は毛皮のようなもので覆われていますが、それが自前のものなのか、衣服なのかは判断が付きません」
「よし! コミュニケーションを図るんだ!」と船長が興奮して叫んだ。
機関士はベストを尽くした。火星人は友好的かつ好奇心旺盛のようだった。フォン・フリッシュは、聞いたことのある唯一の方法を試した。
仲間たちが興味津々で見守る中、彼はパワーズ船長からの絶え間ない質問を聞き流しながら、しゃがみ込んで赤い砂の上に直角三角形を描いた。そして最も短い辺の傍らに三つ、直角を挟んだ隣辺の傍らに四つの印を描いた。
そして後ろに下がり、火星人たちに問いかけるような視線を投げかけた。
火星人の一人がひょろ長い手足を絡ませるようにしゃがみ込み、斜辺の傍らに五つの印を描いた。
「船長! 彼らはピタゴラスの定理を理解しています!」とフォン・フリッシュは叫んだ。
「いいぞ! それなら天文学についてもある程度の知識があると考えても良いだろう。続けてくれ」
フォン・フリッシュ機関士は、少し考えてから三角形を消した。そして太陽を模して小さな円を描き、日光を示すためにいくつか放射状の直線を引いた。彼はその周りに四つの大きな同心円を描き、それぞれの円上に惑星を示す小さな円を描いた。
彼は第三惑星を指さし、自分を指さした。続いて仲間たちを一人ずつ指し示した。そして第四惑星を指さし、火星人たちを一人ずつ指し示した。仕上げに、フォン・フリッシュは空を指さして言った。
「私たちは地球人。あなたたちは火星人」
悲劇が起きた原因の一つは、火星人が持っているものが武器であることに、地球人が気づいていなかったことである。彼ら三人は、火星人がそれを使った時にようやく事実に気づき、そして三人とも死亡した。
『彼奴らが武装しているかは判然としませんでしたが』と狩猟隊のリーダーが言った。『我が種族を害しようと意図していることが分かったため、皆殺しにしました』
『何たることだ』と長老が言った。『その者たちはいかなることを企んでいたのか?』
『彼奴らは愚かにも自らの意図を我々に明かしたのです。彼奴らは、この世界を征服し、我が種族を太陽から遠くへ、大いなる惑星である木星へと追いやる計画だと我々に告げたのです』
『ならば、お主の取った行動に間違いはなかった』と長老は大きな目をまたたかせながら言った。
ビッグズとゴールデンはGボートの近くで作業をしていた。二人の無線は遠征班とは違うチャンネルに設定してあったので、パワーズ船長が狂ったように叫ぶ声も、返事がないという事実にも気づくことはなかった。日が沈みつつあった。ビッグズが西の空を眺めながら言った。
「あの方向にあるはずなんだが、やはり見えないな」
「何がだい?」とゴールデンが聞いた。
「水星だよ」と、日ごろからアマチュアとして天文学に打ち込んでいるビッグズが答えた。「太陽に近すぎるから、火星からだと望遠鏡なしじゃ見えないはずだ」
アマチュア天文学者は含み笑いをし、そして付け加えた。
「もし火星人が存在するならば、彼らは自分たちを第三惑星人だと思っているに違いない。どうだい? 面白いじゃないか?」
終わり